マンション売却の費用一覧|5,000万円で売ると手取りはいくら残るか
マンションを5,000万円で売ったときに引かれるお金を、仲介手数料・印紙税・抵当権抹消・譲渡所得税まで通しで計算しました。国交省の報酬額告示、国税庁、法務省の一次資料で金額の根拠を確認しています。取得費が分かるかどうかで税額が約930万円変わる仕組みも解説します。
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「5,000万円で売れます」と言われた。
でも、5,000万円がそのまま口座に入るわけじゃないですよね。じゃあ、いくら残るんだろう。
ここ、いちばん知りたいのに、いちばん説明されない部分です。査定書に書いてあるのは価格だけ。引かれるお金の一覧は、たいてい付いてきません。
この記事では、5,000万円で売れたケースを最初から最後まで通しで計算します。金額の根拠は、国土交通省の報酬額告示、国税庁のタックスアンサー、法務省の手続案内から取りました。すべて2026年9月3日時点の記載です。
この記事の目次
- 結論から言うと、手取りは「5,000万円 − 約173万円 − 税金 − ローン残債」💰
- まず、あなたがこの記事に当てはまるか確認します
- 5,000万円で売れたとき、実際に引かれるお金の全体像 📊
- 仲介手数料:「3%+6万円」の6万円はどこから来たのか 📋
- 覚えておくと役に立つ、3つの事実
- ここで、売主に不利な仕組みの話をします
- 印紙税:5,000万円ちょうどと5,000万1円で、3倍違います
- 抵当権抹消:マンションなら登録免許税は2,000円 🏠
- 自分でやるか、司法書士に頼むか
- 譲渡所得税:ほとんどの人はゼロ。でも「買った値段が分からない」と一変します
- 計算の骨組み
- モデルケースの計算
- 取得費が分からないと、こうなります
- 益が大きいときは、10年超の軽減税率も見てください
- 手取りが確定するまでの時間差を知っておいてください
- うまくいかないときの分岐
- 営業電話について
- 相場を自分で調べる:国交省のデータと、うちいくらの集計 🗾
- 国土交通省 不動産情報ライブラリ
- うちいくらの集計
- 一次情報で確かめる:どこに何が書いてあるか
結論から言うと、手取りは「5,000万円 − 約173万円 − 税金 − ローン残債」💰
3行でまとめます。
- 売却で必ず出ていくお金は、5,000万円なら約173万円(仲介手数料171.6万円+印紙税1万円+抵当権抹消の登録免許税0.2万円)。成約価格の約3.5%です。
- 譲渡所得税は、自分が住んでいたマンションなら0円になることが多い。3,000万円の特別控除があるからです。ただし申告は必要です。
- 手取りを左右する最大の分かれ目は「買ったときの契約書が残っているか」。同じ5,000万円でも、契約書があるかないかで税額が約930万円変わるケースがあります。
理由は、このあと順番に説明します。
まず、あなたがこの記事に当てはまるか確認します
先に前提を確認させてください。3つとも当てはまるなら、このあとの計算がそのまま使えます。
| 確認すること | この記事が想定している状態 |
|---|---|
| 売るもの | 分譲マンション(区分所有建物)。一戸建て・土地は登記費用の考え方が少し変わります |
| 売り方 | 不動産会社に仲介を依頼して、個人の買主に売る |
| 売主 | 個人。不動産賃貸業や売買業として保有しているのではない |
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当てはまらない場合の違いも書いておきます。
- 一戸建て・土地:抵当権抹消の登録免許税は「不動産の個数×1,000円」なので、土地が2筆に分かれていれば建物1+土地2で3,000円になります。
- 不動産会社に直接買い取ってもらう(買取):仲介手数料はかかりませんが、その分、売却価格は市場での成約価格より低くなるのが通常です。手取りで比較しないと判断できません。
- 投資用として貸していた部屋:3,000万円の特別控除は「自分が住んでいた家」が対象です(国税庁 No.3302)。貸していた期間の減価償却の扱いも変わります。
5,000万円で売れたとき、実際に引かれるお金の全体像 📊
計算に使うモデルケースを決めます。
- 東京都内、専有面積70㎡、鉄筋コンクリート造の分譲マンション
- 2015年に4,200万円で購入(うち建物2,000万円、土地2,200万円と売買契約書に記載あり)
- 2026年に5,000万円で成約。所有期間は11年
- 購入以来ずっと自分が住んでいる
- 住宅ローンの残債が2,500万円ある
これで計算すると、こうなります。
| 項目 | 金額 | 根拠 |
|---|---|---|
| 仲介手数料 | 1,716,000円 | 国交省 報酬額告示(消費税等相当額を含む上限) |
| 印紙税(売買契約書1通分) | 10,000円 | 国税庁 No.7108 軽減後の税額 |
| 抵当権抹消の登録免許税 | 2,000円 | 法務省 抵当権抹消手続案内(不動産1個1,000円×2) |
| 譲渡所得税・住民税 | 0円 | 3,000万円特別控除を適用(国税庁 No.3302) |
| 合計 | 1,728,000円 | 成約価格の約3.5% |
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差し引いた手取りは 4,827万2,000円。ここからローン残債2,500万円を返すので、手元に残るのは約2,327万円です。
ただし、これは「必ずかかるお金」だけの合計です。人によって発生するお金が別にあります。
| 発生することがあるお金 | 内容 |
|---|---|
| 司法書士報酬 | 抵当権抹消を専門家に頼む場合。公的に決まった金額はなく、事務所ごとに異なります |
| ハウスクリーニング・不用品処分 | 引渡し前の片付け。金額は物件と量しだい |
| 引越し費用 | 住み替えなら2回分になることもあります |
| 住宅ローンの一括繰上返済手数料 | 金融機関ごとに異なります。ローン契約書か窓口で確認を |
| 測量・設備の修補費用 | マンションでは稀ですが、契約内容によっては発生します |
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仲介手数料:「3%+6万円」の6万円はどこから来たのか 📋
仲介手数料の上限は、法律ではなく 国土交通大臣の告示 で決まっています。昭和45年建設省告示第1552号、最終改正は令和6年6月21日国土交通省告示第949号です。
告示の第二をそのまま読むと、こう書いてあります。
| 売買代金の区分 | 報酬の率 |
|---|---|
| 200万円以下の金額 | 100分の5.5 |
| 200万円を超え400万円以下の金額 | 100分の4.4 |
| 400万円を超える金額 | 100分の3.3 |
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大事なところが2つあります。
ひとつめ。この率は消費税等相当額を含んだ数字です。「3.3%」の3%が報酬本体、0.3%が消費税です。あとから消費税が上乗せされるわけではありません。
ふたつめ。売却価格の全部に3.3%をかけるのではありません。金額を3つに区切って、それぞれの率をかけて足します。「速算式」として広まっている「3%+6万円」は、この段階計算を1行にまとめたものです。
覚えておくと役に立つ、3つの事実
その1:告示の金額は「上限」であって「定価」ではありません。 告示は「この額を超えて報酬を受けてはならない」という上限規制です。下げることは禁止されていません。実際に手数料を割り引く会社もあります。ただし、値引きを前提に依頼先を選ぶと、広告や内見の手配にかける費用も連動して減ることがあります。手数料だけでなく、どう売るかの説明と併せて判断してください。
その2:800万円以下の物件には特例があります。 告示第七により、売買代金が800万円以下の宅地建物については、媒介に要する費用を勘案して、30万円の1.1倍(33万円)まで受け取れます。地方の低価格帯マンションを売るときは、金額の割に手数料の比率が高くなります。
その3:手数料は「成約したとき」に発生します。 媒介契約(不動産会社に売却を任せる契約、という意味です)を結んだだけでは発生しません。売れなければ支払いは生じないのが原則です。ただし広告費など個別に依頼した実費は別扱いになることがあるので、媒介契約書の該当条項を読んでおいてください。
ここで、売主に不利な仕組みの話をします
不動産会社が売主と買主の両方から手数料を受け取ることを「両手仲介」と呼びます。5,000万円の取引なら、片方だけなら171.6万円、両方なら343.2万円です。
これ自体は違法ではありません。日本では認められています。
問題になるのは、両手にするために 他社からの問い合わせを断る ケースがあることです。「もう商談が入っています」と伝えて、自社で買主を見つけるまで待つ。業界では「囲い込み」と呼ばれます。売主から見ると、売れるまでの期間が延び、条件のよい買主を逃す可能性があります。
対策として現実的なのは、次の2つです。
- 専任媒介・専属専任媒介にする場合、指定流通機構(レインズ)への登録証明書を受け取り、登録後の反響状況を定期報告で確認する
- 「他社から問い合わせは何件ありましたか」と、具体的な件数を毎回聞く
疑ってかかれ、という話ではありません。聞かれることが分かっていれば、それだけで動きは変わります。
印紙税:5,000万円ちょうどと5,000万1円で、3倍違います
売買契約書には収入印紙を貼ります。これが印紙税です。
不動産の譲渡契約書には軽減措置があり、国税庁 No.7108 によると 平成26年4月1日から令和9年3月31日までに作成される契約書 が対象です。軽減後の税額はこうなっています。
| 契約金額 | 軽減後の印紙税 |
|---|---|
| 500万円超 〜 1,000万円以下 | 5,000円 |
| 1,000万円超 〜 5,000万円以下 | 10,000円 |
| 5,000万円超 〜 1億円以下 | 30,000円 |
| 1億円超 〜 5億円以下 | 60,000円 |
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ここで失敗しやすいところ。 5,000万円ちょうどは「1,000万円超5,000万円以下」に入るので1万円です。ところが5,000万100円になると、ひとつ上の区分に移って3万円になります。100円の値上げで印紙税が2万円増えます。
金額としては大きくありませんが、価格交渉の最終局面でキリのいい数字に着地するかどうかで、こういう段差があることは知っておいて損はありません。
もうひとつ。契約書は通常2通作り、売主と買主が1通ずつ保管します。 その場合、それぞれが自分の保管分の印紙を負担するのが実務上の一般的な扱いです。ただしこれは当事者間の取り決めであって、法律で「売主が1通分」と決まっているわけではありません。契約前に、印紙の負担をどうするか不動産会社に確認してください。
なお、この印紙税は 譲渡費用として認められます。国税庁 No.3255 が「印紙税で売主が負担したもの」を譲渡費用の例として挙げています。あとで税金の計算に使うので、領収書ではなく契約書のコピーを取っておいてください。
抵当権抹消:マンションなら登録免許税は2,000円 🏠
住宅ローンを組んだとき、マンションには抵当権が設定されています。売る前に、これを消す必要があります。
法務省民事局が出している「住宅ローンを完済した方へ(抵当権の登記の抹消手続のご案内)マンション編」に、金額がはっきり書いてあります。
登録免許税額は、不動産(土地又は建物)1物件につき、1,000円です(土地1物件と建物1物件の合計2物件ですと、2,000円となります。)
分譲マンションの場合、専有部分の建物1つ+敷地権1つ=2物件で2,000円 が基本形です。同じ資料の記載例も「登録免許税 金2,000円」になっています。
ただし注意書きがあります。
マンションによっては、土地(敷地権)が複数物件となっている場合がありますが、その場合は、その土地(敷地権)の個数に応じて、1,000円が加算されることになります(例:土地(敷地権)が3物件ですと、建物1物件と土地3物件の合計4物件となりますので、4,000円となります。)
自分のマンションの敷地権がいくつあるかは、登記事項証明書を見れば分かります。複数の土地にまたがって建っているマンションだと3つ4つになることがあります。
自分でやるか、司法書士に頼むか
登録免許税そのものは2,000円です。でも、実際にかかるお金はこれだけではありません。
法務省の資料は、手続をこう説明しています。
- 登記申請書は自分で作る必要がある。 資料には「法務局(登記所)では、登記申請書の作成を代行することはできません」と明記されています
- 添付する書類(登記識別情報、登記原因証明情報=解除証書や弁済証書、会社法人等番号、委任状)は、抵当権者である金融機関から送られてくる
- 申請書の様式は法務局のサイト「不動産登記の申請書様式について」からダウンロードできる
- 法務局での登記手続案内は予約制
つまり、時間と手間を自分で負担すれば2,000円で済みます。司法書士に頼めば報酬が別途かかります。報酬額は自由化されていて公的な定価はないので、複数の事務所に見積もりを取ってください。
現実には、売却では 買主側の所有権移転登記と同じ日に同じ司法書士がまとめて処理する のが一般的です。決済当日にローンを完済して、その足で抹消登記をかける。この段取りは自力では組みにくいので、売却に伴う抹消は専門家に任せる人が多いのが実情です。
法務省の資料にもこう書かれています。
抵当権の登記の抹消申請について専門家に相談したい場合は、司法書士・弁護士にご相談ください。
なお、抵当権抹消の費用は、国税庁 No.3255 が挙げる譲渡費用の例(仲介手数料、印紙税、立退料、取壊し費用、違約金、名義書換料)には入っていません。譲渡費用に含められるかどうかは、税務署か税理士に確認してください。
譲渡所得税:ほとんどの人はゼロ。でも「買った値段が分からない」と一変します
ここが手取りを一番大きく動かす部分です。
計算の骨組み
国税庁 No.3202 によると、譲渡所得はこう計算します。
譲渡所得 = 売却金額 −(取得費 + 譲渡費用)
用語を言い換えます。
- 取得費:買ったときの代金と購入手数料など。建物部分は、使った年数分の価値の目減り(減価償却費相当額)を差し引きます
- 譲渡費用:売るために直接かかった費用。仲介手数料、測量費、売買契約書の印紙代など
売った年の1月1日時点で所有期間が5年を超えていれば「長期譲渡所得」、5年以下なら「短期譲渡所得」です。
| 区分 | 所得税 | 復興特別所得税 | 住民税 | 合計 |
|---|---|---|---|---|
| 長期(5年超) | 15% | 所得税額の2.1% | 5%(市民税4%+県民税1%) | 約20.315% |
| 短期(5年以下) | 30% | 所得税額の2.1% | 9%(市民税7.2%+県民税1.8%) | 約39.63% |
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所得税の税率は国税庁 No.3208・No.3211、住民税の内訳は名古屋市の税率表で確認しました。復興特別所得税は平成25年から令和19年までの期間限定です。
モデルケースの計算
先ほどの5,000万円のマンションで、実際に計算します。
ステップ1:建物の減価償却費相当額を出す
国税庁 No.3261 の式です。
建物の取得価額 × 0.9 × 償却率 × 経過年数 = 減価償却費相当額
償却率は建物の構造ごとに国税庁の表で決まっています。実際に計算するときは、国税庁のページで自分の建物の構造の数字を必ず確認してください。ここでは鉄筋コンクリート造の非業務用建物として0.015で計算します。
- 2,000万円 × 0.9 × 0.015 × 11年 = 297万円
- 建物の取得費 = 2,000万円 − 297万円 = 1,703万円
経過年数は「6か月以上の端数は1年、6か月未満は切り捨て」です。また減価償却費相当額は取得価額の95%が上限とされています。
ステップ2:取得費の合計を出す
- 建物1,703万円 + 土地2,200万円 = 3,903万円
(実際には購入時に払った仲介手数料や登記費用なども取得費に加えられます。加えるほど税金は減ります。ここでは分かりやすさのため省いているので、この計算は税額を多めに見積もっています。)
ステップ3:譲渡費用を出す
- 仲介手数料171.6万円 + 印紙税1万円 = 172.6万円
ステップ4:譲渡所得を出す
- 5,000万円 − 3,903万円 − 172.6万円 = 924.4万円
ステップ5:3,000万円の特別控除を当てる
国税庁 No.3302 の「マイホームを売ったときの特例」です。自分が住んでいた家(住まなくなってから3年以内の売却も対象)なら、譲渡所得から最高3,000万円を差し引けます。
- 924.4万円 − 3,000万円 < 0 → 課税される譲渡所得は0円。税額も0円
税額は0円ですが、確定申告は必要です。 特別控除は自動では適用されません。売った年の翌年2月16日から3月15日の間に申告してください(国税庁 No.3102)。
取得費が分からないと、こうなります
同じ5,000万円でも、状況が変わると結果が激変します。
相続で受け継いだマンションで、被相続人がいくらで買ったのか分かる資料が残っていない。相続人は別の場所に住んでいて、この部屋には住んでいない。よくあるケースです。
この場合、国税庁 No.3258 の「概算取得費」を使います。
取得費が分からない場合には、売った金額の5パーセント相当額を取得費とすることができます。
5,000万円の5%なので、取得費はわずか 250万円。
- 譲渡所得 = 5,000万円 − 250万円 − 172.6万円 = 4,577.4万円
- 3,000万円の特別控除は、自分が住んでいないので使えない
- 相続した空き家の特例(No.3306)も、区分所有建物は対象外 なのでマンションでは使えない
- 所得税・復興特別所得税:4,577.4万円 × 15.315% = 約701.0万円
- 住民税:4,577.4万円 × 5% = 約228.9万円
- 税額の合計:約929.9万円
手取りは 5,000万円 − 171.6万円 − 1万円 − 0.2万円 − 929.9万円 = 約3,897万円。
同じ価格で売ったのに、約930万円の差です。
だから、売ると決める前に、まず購入時の売買契約書を探してください。 押し入れの奥でも実家の書棚でもいい。金額が1行書いてあるだけの紙が、数百万円の価値を持つことがあります。
契約書が見つからなくても、購入時のローンの金銭消費貸借契約書、住宅ローン控除の申告書類、通帳の振込記録など、購入金額を裏づける資料が残っていれば認められる可能性があります。最終的な判断は税務署か税理士に確認してください。
益が大きいときは、10年超の軽減税率も見てください
3,000万円を引いてもまだ益が残るケースもあります。その場合、国税庁 No.3305 の「軽減税率の特例」を検討します。
売った年の1月1日時点で家屋・敷地とも 所有期間10年超 のマイホームなら、課税長期譲渡所得のうち6,000万円以下の部分について所得税が10%(本則の15%より低い)になります。3,000万円の特別控除との併用も可能です。住民税も名古屋市の税率表では6,000万円以下の部分が市民税3.2%+県民税0.8%=4%と、本則の5%より低くなっています。
手取りが確定するまでの時間差を知っておいてください
もうひとつ、見落とされがちな話です。お金が出ていくタイミングはバラバラで、住民税は1年以上あとに来ます。
引渡しの日に大きなお金が入ります。ここで使い切ってしまうと、翌年3月の所得税、さらにその後の住民税で困ることになります。
税金分は別の口座に分けて置いておく。 手取り計算をする最大の目的は、実はここにあります。住民税の納税通知が届く時期は自治体によって異なるので、お住まいの市区町村のサイトで確認してください。
もうひとつ。固定資産税の日割り精算金は、譲渡代金に含まれます。 引渡し日以降の分を買主から受け取ることが多いですが、国税庁 No.3214 によれば、この金額も収入金額に算入されます。手取りは増えますが、課税対象も増えます。
うまくいかないときの分岐
症状ごとに、原因と対処を並べます。
| 症状 | 考えられる原因 | 対処 |
|---|---|---|
| 手取りがローン残債を下回りそう | 残債が多い、または相場が購入時より下がっている | 金融機関に残債証明を出してもらい、正確な数字で再計算。売却代金で返しきれない場合の扱いを先に相談する |
| 購入時の売買契約書が見つからない | 相続・長期保有でよくある | ローン契約書、住宅ローン控除の書類、通帳の記録を集める。それでも不明なら概算取得費5%になる(国税庁 No.3258) |
| 査定額が会社によって1,000万円違う | 査定額は売却価格ではない。集客目的で高めに出されることがある | 各社に「その価格の根拠になった成約事例」を出してもらう。事例のない価格は根拠がない |
| 売却で損が出た | 購入時より相場が下がっている | 一定要件を満たせば損失を給与所得などから引ける特例がある(国税庁 No.3390)。損でも申告する価値がある |
| 一括査定を申し込んだら電話が止まらない | 複数社に同時に情報が渡る仕組み | 対処は次の項に書きました |
| 敷地権が複数あり抹消費用が想定より多い | マンションが複数の土地にまたがっている | 登記事項証明書で敷地権の個数を確認。個数×1,000円が加算される(法務省の案内) |
| 印紙税が予定の3倍になった | 契約金額が5,000万円を超えた | 5,000万円が区分の境目。契約前に金額を確認(国税庁 No.7108) |
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営業電話について
一括査定サイトに申し込むと、複数の会社に同時に個人情報が渡ります。だから電話が来ます。これは仕組み上そうなるものであって、避けようとして避けられるものではありません。
警戒するのは、まったく正しい反応です。そのうえで、実際に使える対処を挙げます。
- 申込フォームの「備考」「要望」欄に、連絡方法を書く。 「連絡はメールのみでお願いします。電話は不可です」と明記する。すべての会社が守るとは限りませんが、守らない会社が分かるという意味でも有効です
- 電話番号は、専用の番号を用意する。 格安SIMのサブ回線やIP電話番号を使えば、売却が終わったあとで手放せます
- まず相場だけ知りたい段階なら、一括査定を使わない。 国交省の不動産情報ライブラリで実際の取引価格を見れば、個人情報を渡さずに大まかな水準は分かります
「電話に出て断ればいい」は、実際にはかなりの負担です。負担があることを前提に、いつ申し込むかを決めてください。
相場を自分で調べる:国交省のデータと、うちいくらの集計 🗾
手取りを計算するには、まず売却価格の見当が必要です。不動産会社に聞く前に、自分で調べられます。
国土交通省 不動産情報ライブラリ
国交省の「不動産取引価格情報提供制度」は、不動産取引の当事者へのアンケート調査 をもとに、実際の取引価格を蓄積して公開している制度です。平成18年4月から始まり、令和7年3月31日時点で約547万件のデータがあります。
公開されているのは、所在地(町・大字レベル)、取引時期、取引価格(有効数字2桁)、面積、建物の用途・構造・築年、最寄駅、用途地域などです。
従来のシステムは令和6年3月末に廃止され、現在は「不動産情報ライブラリ」で見られます。
このデータの性格を正しく理解しておいてください。
- アンケートに答えた取引だけ が入っています。全取引の網羅ではありません
- 価格は有効数字2桁に丸められています。 5,000万円と表示されていても、実際は4,980万円かもしれません
- 所在地は町・大字レベル です。同じ町名でも駅からの距離で価格は変わります
うちいくらの集計
うちいくらでは、この国交省の取引価格情報のうち中古マンションのデータを、区市町村別・専有面積帯別・築年帯別に再集計しています。
集計方法は次のとおりです。
- 対象:国交省が公開する中古マンション等の取引価格情報のうち、直近2年間に取引時期が属するもの
- 集計値:各区分ごとの成約価格の中央値(平均値ではありません。極端に高い1件に引っ張られないようにするためです)
- 表示条件:サンプル数が10件未満の区分は数値を出さず、「データ不足」と表示します
たとえば専有面積70㎡・築20年前後という条件は、都区部の中古マンションでは最も件数の多い層のひとつです。この記事のモデルケースを5,000万円に置いたのも、この層の中央値がおおむねその水準に収まる区が複数あるためです。
ただし、中央値はあくまで「その区分の真ん中」であって、あなたの部屋の価格ではありません。 同じマンションでも、階数、方位、リフォームの有無、管理状態で価格は動きます。中央値は「話の出発点」として使ってください。
そして、集計値も査定額も、売却価格ではありません。買主が「その値段なら買う」と言って初めて価格が決まります。査定額がそのまま入金額になることはない、という前提で読み進めてください。
一次情報で確かめる:どこに何が書いてあるか
この記事の数字は、以下の資料に基づいています。いずれも2026年9月3日時点の記載です。制度は変わります。実際に売るときは必ず原典を確認してください。
| 知りたいこと | 見る資料 | 発行元 |
|---|---|---|
| 仲介手数料の上限(5.5% / 4.4% / 3.3%、800万円以下の特例) | 昭和45年建設省告示第1552号(令和6年最終改正) | 国土交通省 |
| 印紙税の軽減後の税額表と適用期間 | タックスアンサー No.7108 | 国税庁 |
| 抵当権抹消の登録免許税(不動産1個1,000円)と申請手順 | 住宅ローンを完済した方へ(抵当権の登記の抹消手続のご案内)マンション編 | 法務省民事局 |
| 登記申請書の様式 | 不動産登記の申請書様式について | 法務局 |
| 譲渡所得の計算式・長期短期の区分 | タックスアンサー No.3202 | 国税庁 |
| 譲渡費用として認められるもの | タックスアンサー No.3255 | 国税庁 |
| 建物の減価償却費相当額の計算 | タックスアンサー No.3261 | 国税庁 |
| 取得費が不明なときの5%ルール | タックスアンサー No.3258 | 国税庁 |
| 3,000万円の特別控除の要件 | タックスアンサー No.3302 | 国税庁 |
| 10年超マイホームの軽減税率 | タックスアンサー No.3305 | 国税庁 |
| 相続空き家の特例(区分所有建物は対象外) | タックスアンサー No.3306 | 国税庁 |
| 売却損が出たときの特例 | タックスアンサー No.3390 | 国税庁 |
| 住民税(分離課税)の税率 | 土地・建物・株式等の譲渡所得等の分離課税の税率 | 名古屋市 |
| 取引価格データの性格と収集方法 | 不動産取引価格情報提供制度 | 国土交通省 |
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住民税の税率は制度上は全国共通ですが、通知の時期や納付方法は自治体ごとに異なります。数字の細部が気になる場合は、お住まいの市区町村の税務担当課に確認してください。
また、この記事は制度の一般的な説明です。あなたの物件に特例が使えるかどうか、取得費として何が認められるかといった個別の判断は、税務署、税理士、司法書士に確認してください。
よくある質問
Q1. 仲介手数料は値引き交渉できますか?
告示は上限を定めたものなので、下げること自体は禁止されていません。実際に割引をうたう会社もあります。ただし、手数料の水準と、広告の出し方・内見の対応・レインズへの登録状況はセットで見てください。手数料だけで選ぶと、売れるまでの期間が延びて結果的に手取りが減ることもあります。媒介契約を結ぶ前に、いくらの手数料で何をしてもらえるのかを書面で確認するのが確実です。
Q2. 税額が0円でも確定申告は必要ですか?
3,000万円の特別控除を使って税額が0円になる場合、控除は自動では適用されません。売った年の翌年2月16日から3月15日の間に確定申告してください(国税庁 No.3102)。申告しなければ控除も適用されず、あとから通知が来ることになります。
Q3. 買ったときより安く売れました。何か手続きはありますか?
売却損が出た場合でも、申告する価値があります。国税庁 No.3390 の「特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除」は、住宅ローン残高を下回る価格でマイホームを売って損が出たとき、その損失を給与所得などから差し引ける制度です。控除しきれない分は翌年以後3年間繰り越せます。所有期間5年超、契約日の前日に償還期間10年以上の住宅ローン残高があること、などの要件があります。要件は細かいので税理士か税務署に確認してください。
Q4. 相続したマンションを売ります。空き家の3,000万円控除は使えますか?
被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例(国税庁 No.3306)は、区分所有建物が対象外 です。分譲マンションはこれに該当するため、原則として使えません。この特例は昭和56年5月31日以前に建築された一戸建てなどを想定した制度です。マンションを相続して売る場合は、取得費の資料を探すことが実質的に唯一の対策になります。
Q5. 手取りの計算を自分でやるとき、何から始めればいいですか?
順番はこうです。①購入時の売買契約書を探す ②金融機関にローン残債証明を依頼する ③国交省の不動産情報ライブラリで同じ地域・面積帯の取引価格を見る ④この記事の表を使って費用を引く。ここまでを不動産会社に連絡する前にやっておくと、あとで提示された査定額を自分の数字と照らして読めるようになります。査定額を評価する物差しを、先に自分で持っておくということです。
最後にもう一度だけ。
査定額は売却価格ではありません。売却価格は手取りでもありません。この記事で見てもらいたかったのは、その2つの段差です。
5,000万円という数字を見たとき、実際に自分の口座に何が残るのか。それが分かっていれば、次に不動産会社と話すときの立ち位置がまったく変わります。
(この記事の金額・制度はすべて2026年9月3日時点の公表内容に基づいています)
出典
- No.3202 譲渡所得の計算のしかた(分離課税)(国税庁) 2026-09-03 閲覧
- No.3255 譲渡費用となるもの(国税庁) 2026-09-03 閲覧
- No.3208 長期譲渡所得の税額の計算方法(国税庁) 2026-09-03 閲覧
- No.3211 短期譲渡所得の税額の計算方法(国税庁) 2026-09-03 閲覧
- No.3302 マイホームを売ったときの特例(3,000万円の特別控除)(国税庁) 2026-09-03 閲覧
- No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例(国税庁) 2026-09-03 閲覧
- No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例(国税庁) 2026-09-03 閲覧
- No.3258 取得費が分からないとき(国税庁) 2026-09-03 閲覧
- No.3261 建物の取得費の計算(国税庁) 2026-09-03 閲覧
- No.3214 土地建物を売ったときの収入金額に含める金額(国税庁) 2026-09-03 閲覧
- No.3102 譲渡所得の申告期限(国税庁) 2026-09-03 閲覧
- No.3390 マイホームを売却して譲渡損失が生じた場合の損益通算及び繰越控除(国税庁) 2026-09-03 閲覧
- No.7108 不動産譲渡に関する契約書に係る印紙税の軽減措置(国税庁) 2026-09-03 閲覧
- 償却費相当額の計算方法(非業務用建物)(国税庁 確定申告書等作成コーナー) 2026-09-03 閲覧
- 宅地建物取引業法関係(報酬額の告示)(国土交通省) 2026-09-03 閲覧
- 宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額(昭和45年建設省告示第1552号、令和6年最終改正)(国土交通省) 2026-09-03 閲覧
- 宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額(建設省告示)(大阪府) 2026-09-03 閲覧
- 住宅ローンを完済した方へ(抵当権の登記の抹消手続のご案内)マンション編(法務省民事局) 2026-09-03 閲覧
- 不動産登記の申請書様式について(法務局) 2026-09-03 閲覧
- 土地・建物・株式等の譲渡所得等の分離課税の税率(名古屋市) 2026-09-03 閲覧
- 不動産取引価格情報提供制度(国土交通省) 2026-09-03 閲覧