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売却益にかかる税金の計算方法|3,000万円控除でゼロになるか

家を売った利益にかかる税金を、実際の数字を入れながら計算式で追います。3,000万円特別控除の適用条件を一つずつ確認し、控除を使っても税金が残る5つの典型パターンと、申告しないと控除が効かない仕組みまで解説します。

売却益にかかる税金の計算方法|3,000万円控除でゼロになるか

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「4,000万円で買った家が4,200万円で売れそう。200万円も儲かったら、税金いくら取られるんだろう」

この記事の結論

結論から言うと、こうです。

  1. 税金がかかるのは売値ではなく「もうけ(譲渡所得)」。買った値段と経費を引いた残りです
  2. 自分が住んでいた家なら、そのもうけから最大3,000万円を引ける特例があります
  3. ただし控除を使って税額がゼロでも、確定申告をしなければ控除は適用されません

そして、この記事で一番伝えたいのはここです。3,000万円控除でゼロになる人は確かに多い。でも「買ったときの契約書が見つからない」その一点で、税金が170万円に化けることがあります。以下、数字を入れて追っていきます。

(この記事の税率・制度の内容はすべて2026-09-14時点のものです。個別の判断は税理士や税務署にご確認ください)

選び方の基準

この記事には「先にこれを確認してください」「この5つに注意」といった優先順位の付いた説明が出てきます。何を基準にその順番を決めたのかを、先に開示しておきます。

基準 中身 どこに効いているか
1. 公的な出典に明記があるか 国税庁のタックスアンサー、または自治体の公式ページに要件・数値が書かれている項目だけを扱う。書かれていない論点は載せない 記事全体。判断のもとになる条文・要件はすべて出典付き
2. 税額への影響が大きい順 同じ条件で計算したときに、納める税額が何万円動くかで並べる 「控除を使っても税金が残る5つのパターン」の並び順。1番目の概算取得費は単独で約171万円動く
3. あとから取り返しがつかない度合い 期限切れ・書類の廃棄など、時間が経つと選択肢が消えるものを前に置く 「3年ルール」「契約書を探す」を早い段階に配置
4. つまずいた人が実在するか 知恵袋などに同じ状況の質問が実際に投稿されている論点を優先する 契約書の紛失、住宅ローン控除との二者択一、保険料への影響

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順番は「一般的に多いから」ではなく、上の1〜4で決めています。金額の大きさを基準にしているので、読者の状況によっては4番目の項目のほうが重要になることもあります。自分に当てはまる見出しから拾い読みしてください。

なお、この記事では特定の不動産会社・査定サービスの優劣は扱いません。比較できるだけの公表データがないからです。

この記事の目次
  1. 税金がかかるのは「売値」じゃない 💰
  2. 自分が3,000万円控除を使えるか、先に判定する 📋
  3. 4,200万円で売った家で、実際に計算してみる
  4. 「買ったときの契約書がない」が、いちばん高くつく
  5. 控除を使っても税金が残る、5つの典型パターン 📊
  6. 税率は二段。10年超ならもう一段下がる
  7. ゼロでも申告は必要。やることを順番に 🏠
  8. 住宅ローン控除とは二者択一。ここが一番もめる
  9. 実家を相続して売るなら、別の3,000万円がある
  10. 税金ゼロでも保険料は上がるのか
  11. うちいくらの集計|控除で収まるかは「どこの家か」で変わる 🗾
  12. この記事のまとめ

税金がかかるのは「売値」じゃない 💰

まずここだけ押さえれば、あとは全部その応用です。国税庁の計算式はこうなっています。

収入金額 −(取得費 + 譲渡費用)− 特別控除額 = 課税譲渡所得金額

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売った金額 収入金額 − 取得費 買った値段+諸費用 − 譲渡費用 仲介手数料など = 譲渡 所得 譲渡所得 − 3,000万円の特別控除 住んでいた家なら、ここで最大3,000万円引ける 課税譲渡所得 × 税率 = 納める税額 ここが0円以下なら、税金はかからない

ポイントは「取得費」の中身です。買った代金だけではありません。国税庁は、購入手数料、登録免許税、不動産取得税、立退料、造成費用、測量費、そして使用開始日までの借入金の利子まで取得費に含めています。ここを拾えるだけ拾うと、譲渡所得はその分だけ減ります。

一方で建物は買った値段のままでは引けません。所有していた期間の減価償却費相当額を差し引いた金額が建物の取得費になります。土地は減りませんが、建物は減る。ここが最初の落とし穴です。

譲渡費用のほうは範囲が狭いです。仲介手数料、売主負担の印紙税、建物を壊して土地を売ったときの取壊し費用などは入ります。でも固定資産税、修繕費、維持管理の費用は入りません。「リフォームして売ったから経費でしょう」と思いがちですが、売るためではない修繕費は対象外です。

自分が3,000万円控除を使えるか、先に判定する 📋

計算する前に、そもそも特例が使えるかどうか。ここを先に潰したほうが早いです。

売った家に、自分が住んでいた? 今も住んでいる/住まなくなって3年目の年末までに売る 別荘・一時的な入居・特例目的の入居は対象外 買主が親子・夫婦など特別の関係がある人ではない 生計を一にする親族への売却はNG 前年・前々年にこの特例や買換え特例を使っていない つまり「3年に1度」しか使えない 4つ全部◯なら、控除を使える

国税庁の条文で特に見落とされがちなのが、3年ルールの数え方です。「住まなくなってから3年」ではなく、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで。2023年5月に引っ越したなら、期限は2026年12月31日です。単純に3年後の5月ではありません。ここ、半年以上ずれます。

もうひとつ。所有期間の長短は3,000万円控除には関係ありません。買って1年で売っても使えます(税率のほうは変わります。後述)。

除外されるケースも明記されています。「特例の適用を受けることだけを目的として入居したと認められる家屋」「一時的な目的で入居したと認められる家屋」「別荘などのように主として趣味、娯楽または保養のために所有する家屋」。売る直前に住民票だけ移す、というやり方は制度側で織り込み済みということです。

4,200万円で売った家で、実際に計算してみる

ここからは数字を入れます。次の条件で追いかけます。

項目 内容
売却価格 4,200万円(2026年に売却)
購入 2005年/4,000万円(建物2,000万円・土地2,000万円)
購入時の諸費用 150万円(仲介手数料・登録免許税・不動産取得税など)
構造 鉄筋コンクリート造のマンション
居住状況 売るまで自分が住んでいた

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ステップ1:建物の減価償却を引く

非業務用(自分の住まい)の建物は、国税庁の式で計算します。

建物の取得価額 × 0.9 × 償却率 × 経過年数 = 減価償却費相当額

鉄筋コンクリートの償却率は0.015。経過年数は21年です。

2,000万円 × 0.9 × 0.015 × 21年 = 567万円

建物の取得費は 2,000万円 − 567万円 = 1,433万円。20年ちょっとで建物の価値が3割近く目減りした計算です。木造だと償却率が0.031なので、もっと速く減ります。

ステップ2:取得費を合計する

土地2,000万円 + 建物1,433万円 + 購入諸費用150万円 = 3,583万円

(厳密には購入諸費用も土地と建物に按分して建物分を償却しますが、ここでは流れを見るために簡略化しています)

ステップ3:譲渡費用を出す

譲渡費用 金額
仲介手数料(4,200万円×3%+6万円+消費税) 約145万円
売買契約書の印紙税 1万円
合計 約146万円

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ステップ4:譲渡所得を出す

4,200万円 −(3,583万円 + 146万円)= 471万円

売却代金 4,200万円の内わけ 取得費 3,583万円 譲渡費用146万 471万 ← 譲渡所得 3,000万円の控除枠に対して 471万 残り 2,529万円ぶんの控除枠が余る 課税譲渡所得 = 471万円 − 3,000万円 → 0円(マイナスは0として扱う)

471万円の譲渡所得に3,000万円の控除。課税譲渡所得は0円、所得税も住民税もかかりません。

ただし念のためもう一度。この「0円」は、確定申告をして初めて成立します。何もしなければ、控除は適用されません。

「買ったときの契約書がない」が、いちばん高くつく

さっきの計算、実は前提がひとつあります。2005年の売買契約書が手元にあること。

取得費を証明できないとどうなるか。国税庁は「売った金額の5パーセント相当額を取得費とすることができます」としています。概算取得費と呼ばれるものです。優しい救済措置に見えますよね。数字を入れると、優しくないことが分かります。

同じ家、契約書だけがない場合:

  • 概算取得費 = 4,200万円 × 5% = 210万円
  • 譲渡所得 = 4,200万円 −(210万円 + 146万円)= 3,844万円
  • 3,000万円控除後 = 844万円

同じ家・同じ売値でも、契約書の有無で譲渡所得はこれだけ変わる 契約書あり(取得費3,583万円) 譲渡所得 471万円 → 控除内で税額0円 契約書なし(概算取得費210万円) 譲渡所得 3,844万円 → 控除後も844万円が残る 差額844万円に、長期なら所得税・住民税あわせて約171万円(2026-09-14時点の税率)

844万円に税率がかかります。所有期間は5年超なので長期譲渡所得。所得税15%、住民税5%、それに復興特別所得税が所得税額の2.1%。

内わけ 計算 税額
所得税 844万円 × 15% 126.6万円
復興特別所得税 126.6万円 × 2.1% 約2.7万円
住民税 844万円 × 5% 42.2万円
合計 約171万円

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契約書1枚で171万円。正直、ここまで差が開くとは思っていませんでした。

Yahoo!知恵袋には、まさにこの状況の質問があります。「2025年6月に持ち家を売却。購入時4400万円、売却時2900万円。購入時の売買契約書は廃棄済み」。回答のひとつは「税務署は、『買った金額』や『売った金額』は知りませんので、確定申告をしないと、さらに『お尋ね』がくるかもしれません」と書いていました。売値2,900万円なら3,000万円控除で結局ゼロになるケースですが、申告しなければそれは証明されない、という筋の話です。

契約書がない場合、通帳の入金記録、住宅ローンの金銭消費貸借契約書、当時のパンフレットや分譲時の価格表など、金額を裏づける資料をかき集めることになります。ここは税務署か税理士に相談する領域です。捨てる前に、まず探してください。

控除を使っても税金が残る、5つの典型パターン 📊

概算取得費以外にも、控除が届かない・そもそも使えないケースがあります。ここに挙げる5つは、先の「選定基準」で書いたとおり、国税庁が要件や除外を明記している論点のうち、税額への影響が大きい順に並べたものです。

1. 取得費が分からない 売値の5%しか引けず、もうけが膨らむ 古い実家・相続した土地で頻発 2. もうけが3,000万円を超える 昔から持っている土地・都心の物件 超えた部分にそのまま課税 3. 住んでいない家だった 3年の期限切れ、賃貸に出していた、 別荘、投資用ワンルーム 4. 3年以内に使っていた 前年・前々年にこの特例や 買換え特例を使っていると不可 5. 土地だけを持っていた共有者 控除は共有者1人につき最高3,000万円。ただし家屋を持たず敷地だけ共有している人は、 原則としてこの特例を受けられない(国税庁 No.3308)

5番目は特に見落としがちです。夫婦それぞれが持分を持っていれば控除は各自3,000万円、合わせて6,000万円まで使えます。ところが「土地は妻名義、建物は夫名義」という組み方だと、妻のほうは原則として使えません。国税庁の表現は「家屋の所有者以外の者は原則としてこの特例の適用を受けることはできません」。名義の組み方が数百万円を左右する、という話です。

店舗や事務所と兼用の住宅も注意が要ります。控除の対象になるのは居住用に使っていた部分だけ。1階が店舗、2階が住まいなら、面積で按分することになります。

税率は二段。10年超ならもう一段下がる

課税譲渡所得が残った場合、次は税率です。所有期間で大きく変わります。

判定は売った年の1月1日時点の所有期間。「買ってから何年か」ではありません。2021年3月に買って2026年6月に売ると、2026年1月1日時点では4年9か月なので短期扱いです。ここ、契約のタイミングを半年ずらすだけで税率が倍違います。

区分 所有期間(売った年の1/1時点) 所得税 住民税 合計
短期譲渡所得 5年以下 30%(復興税込み30.63%) 9% 約39.63%
長期譲渡所得 5年超 15%(同15.315%) 5% 約20.315%
10年超の軽減税率(6,000万円以下の部分) 10年超 10%(同10.21%) 4% 約14.21%
10年超の軽減税率(6,000万円超の部分) 10年超 15%(同15.315%) 5% 約20.315%

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住民税の内わけは自治体の公表しているとおりで、たとえば名古屋市は一般の長期で「市民税4%・県民税1%」、10年超の軽減税率(6,000万円以下)で「市民税3.2%・県民税0.8%」と明記しています。

そして地味に嬉しいのが、10年超の軽減税率は3,000万円控除と重ねて使えることです。国税庁も「重ねて受けることができます」と書いています。さきほどの契約書がないケースが仮に10年超所有だったとすると、844万円への税額は約120万円。約171万円から50万円ほど下がります。同じ家、同じ売値でも、所有期間と書類の有無でこれだけ動く。

一方、買換え特例(住み替えで課税を先送りする制度)とは併用できません。どちらかの選択です。

ゼロでも申告は必要。やることを順番に 🏠

ここが本題です。3,000万円控除は「自動的に引かれるもの」ではありません。確定申告で適用を受けて初めて効きます。

1 書類を集める 売買契約書 (買ったとき・売ったとき) 領収書・精算書 2 内訳書を作る 譲渡所得の内訳書 (確定申告書付表兼 計算明細書) 3 申告書に転記 分離課税用の第三表 特例の適用条文も 記入する 4 期限内に提出 売った年の翌年 2/16〜3/15が原則 (土日でずれる年あり)

1. 書類を集める

国税庁が挙げている添付書類は、「譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)」と、売買契約日の前日の住所と売った物件の所在地が違う場合の「戸籍の附票の写しなど」。そこに住んでいたことを示すためです。引っ越してから売った人は、ここでつまずきやすいポイントです。

買ったときの売買契約書、売ったときの売買契約書、仲介手数料の領収書、登記費用の明細も手元に揃えます。ここで失敗しやすいのは、購入時の資料を「もう売ったから」と処分してしまうこと。 申告が終わるまでは捨てないでください。

2. 譲渡所得の内訳書を作る

【土地・建物用】の様式は1面から4面までと、別途5面という構成になっています。売った物件、売買の相手、金額、取得費、譲渡費用、使う特例を書き込んでいく書類です。国税庁は毎年、事例つきの記載例を公開しています。

3. 申告書に転記する

分離課税用の第三表に、内訳書で計算した数字を移します。控除の根拠となる条文も記載します。

4. 期限内に出す

原則として売った年の翌年2月16日〜3月15日。2026年中に売った人は、2027年の申告です。直近の申告期限は令和8年(2026年)3月16日でした(3月15日が日曜のため翌日)。

書類の作成は国税庁の「確定申告書等作成コーナー」で進められます。画面の質問に答えていくと内訳書と申告書が同時にできる仕組みで、手書きより早いです。

国税庁の確定申告特集ページ。作成コーナーへの入口がここにあります
国税庁の確定申告特集ページ。作成コーナーへの入口がここにあります(nta.go.jp・2026-09-14時点の画面)

つまずいたときの分岐

症状 原因 対処
購入時の契約書がない 紛失・廃棄 通帳、ローン契約書、当時の価格表などを探す。見つからなければ概算取得費5%。税務署に相談を
建物と土地の内訳が契約書にない 総額表示の契約 消費税額から建物価格を逆算する方法などがある。税理士に確認
引っ越してから売った 契約日前日の住所と物件所在地が不一致 戸籍の附票の写しなどを添付
売った年は無職・年金だけ 申告不要と思い込む 控除を使うには申告が必要。所得が0でも提出する
夫婦共有で持分が違う 持分ごとに計算していない 持分割合で収入も取得費も按分し、1人ずつ内訳書を作る
申告を忘れたまま年を越した 期限後 期限後申告が可能な場合がある。早めに税務署へ

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住宅ローン控除とは二者択一。ここが一番もめる

売って、買う。住み替えの人はここを必ず確認してください。

住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)の適用要件に、こういう一文があります。

居住年およびその前2年、その後3年の計6年間(令和2年3月31日以前の譲渡の場合は、居住年およびその前後2年の計5年間)に次に掲げる譲渡所得の課税の特例の適用を受けていないこと。

その「次に掲げる特例」に、居住用財産の譲渡所得の特別控除(措法35条1項)=3,000万円控除が入っています。

つまり、旧居を売って3,000万円控除を使うと、新居の住宅ローン控除が6年間の枠に引っかかって使えなくなるということです。令和2年4月以降の譲渡から、この制限は前後あわせて6年に広がりました。

どちらが得かは金額次第です。旧居のもうけが小さければ、3,000万円控除を捨てて住宅ローン控除を取ったほうが有利になることもあります。逆にもうけが大きければ、控除を使ったほうが手元に残ります。

知恵袋にも、まさにこの選択で迷っている投稿がありました。マンション売却で2,040万円の利益が出て、新築戸建てを買った人の質問です。回答者からは「減価償却を考慮していないので利益額が違う可能性がある」「税理士に相談する案件」という指摘が並んでいました。生成AIに聞いて出てきた答えが間違っていた、というやりとりもあります。

個人的には、この論点だけは自力で結論を出さないほうがいいと考えます。理由は単純で、比較するのに必要な変数が多すぎるからです。売却益、減価償却後の取得費、新居のローン残高、借入年数、自分の所得税・住民税額。どれかひとつの前提がずれると結論が逆転します。数万円の相談料で数十万〜百万円単位の差がつく話です。

実家を相続して売るなら、別の3,000万円がある

親の家を相続して売る場合、自分は住んでいないので通常の3,000万円控除は使えません。代わりに「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」があります。要件はかなり細かいです。

要件 内容
建築時期 昭和56年5月31日以前に建築されたこと
状態 譲渡時に一定の耐震基準を満たす、または家屋を全部取り壊して敷地を売る
売却期限 相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで
制度の期限 平成28年4月1日から令和9年12月31日までの譲渡
売却価格 1億円以下であること
控除額 最高3,000万円。ただし令和6年1月1日以後の譲渡で相続人が3人以上の場合は2,000万円
併用 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例などとの併用不可

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相続人が3人以上だと2,000万円に減る、という改正は2024年から。兄弟3人で実家を相続したケースだと、1人あたりの控除枠が1,000万円ずつ削られる計算になります。

もうひとつ、令和6年1月1日以後の譲渡なら、売った翌年2月15日までに耐震改修または取り壊しを終えれば要件を満たす扱いが加わりました。買主側で解体してもらう段取りが組めるようになった、ということです。これは実務的に大きい変更だと思います。

なお、相続した不動産を売る場合、相続税を払っていれば「取得費加算の特例」も選択肢に入ります。相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに売れば、払った相続税の一部を取得費に上乗せできる制度です。ただし空き家特例とは併用できません。どちらが有利かは金額を両方で計算してみるしかありません。

税金ゼロでも保険料は上がるのか

これは調べていて一番意外だった話です。

知恵袋に、老人ホームに入居中の母の実家を売ろうとしている人の質問がありました。「3,000万円の特別控除で所得税・住民税が0になる場合でも、介護施設の負担割合が上がるのか」。回答には「簡単に3割負担まで上がってしまう」というものもありました。

ところが、自治体の公式説明を読むと話が違います。

江東区は介護保険料の算定について「平成30年度から、土地や建物などに係る譲渡所得は特別控除後の金額が適用されます」と明記しています。岡山市も、介護サービス利用時の負担割合の判定に使う合計所得金額を「地方税法上の合計所得金額から、土地建物等の譲渡所得に係る特別控除額を除いた金額です」と説明しています。

国民健康保険料も同じです。広島市は「分離課税となる『2.短期譲渡所得』及び『3.長期譲渡所得』については、特別控除後の金額が保険料(所得割)の算定対象となる所得になります」としています。

つまり、3,000万円控除でもうけが消える人は、介護保険料・介護の負担割合・国保の保険料の判定でもその控除が効くということです。平成30年度の制度改正以降の扱いなので、それ以前の情報を見て不安になっている人がいるのだと思います。

ただし、控除で消えきらなかった部分は所得として残ります。さきほどの「契約書がない」ケースの844万円は、翌年の保険料や負担割合に響きます。売却の翌年に保険料の通知を見て驚く、という順番になりがちです。ここは自分の自治体のページで確認してください。自治体ごとに説明の書き方も、判定の基準日も違います。

うちいくらの集計|控除で収まるかは「どこの家か」で変わる 🗾

3,000万円で足りるのかどうか。それは結局、いくらで売れて、いくらで買ったかの差です。

うちいくらでは、国土交通省が不動産情報ライブラリで公開している不動産取引価格情報を四半期ごとに取り込み、市区町村×物件種別×面積帯ごとに中央値を出しています。元データは取引当事者へのアンケート回答をもとにしたもので、個々の物件の状態や階数、駅距離といった条件までは反映されません。あくまで「そのエリアでどのくらいの価格帯の取引が起きているか」の目安として見てください。

国土交通省「不動産情報ライブラリ」の取引価格検索画面
国土交通省「不動産情報ライブラリ」の取引価格検索画面(reinfolib.mlit.go.jp・2026-09-14時点の画面)

たとえば2025年通年、専有面積60〜80㎡の中古マンションの取引価格中央値を区ごとに並べると、都心と郊外でこれだけ開きます(うちいくら集計)。

エリア 中古マンション60〜80㎡の取引価格中央値
東京都港区 1億2,800万円前後
東京都世田谷区 6,480万円前後
東京都練馬区 4,150万円前後
埼玉県川口市 3,280万円前後

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港区で2000年代前半に6,000万円で買った70㎡のマンションを1億2,800万円で売ると、減価償却後の取得費と譲渡費用を差し引いても譲渡所得は6,000万円を超えます。3,000万円控除を使っても3,000万円以上が残り、10年超の軽減税率を使っても400万円台の税額になります。一方、練馬区で4,100万円で買った家を4,150万円で売るなら、そもそも譲渡所得がほとんど出ません。

ここで一言だけ。査定額は売却価格ではありません。 不動産会社の査定は「このくらいで売り出せそう」という見立てであって、成約価格とは別物です。税金の見積もりを査定額でやると、だいたい高めに出ます。まず国交省の取引価格情報で実際の成約帯を確認して、そのうえで税額をざっくり試算する。この順番のほうが現実に近い数字になります。

査定を取ること自体は必要ですが、一括査定サイトに登録すると複数社から一斉に電話が来ます。数分おきに着信が続くこともあります。フォームの備考欄に「連絡はメールのみでお願いします」と書いておく、連絡可能な時間帯を指定する、といった対処はできます。それでも電話は来るものとして構えておいたほうがいいです。相場を知りたいだけの段階なら、公表データを見るところから始めれば十分です。

よくある質問

Q. 3,000万円控除を使って税金がゼロになるなら、確定申告はしなくていい?

必要です。この特例は申告して初めて適用されます。申告しなければ、税務署から見れば「4,200万円で売った人」のままです。国税庁も、譲渡所得の内訳書の提出を特例を受けるための手続きとして挙げています。

Q. 夫婦共有名義なら控除は6,000万円になる?

家屋も敷地も夫婦それぞれが持分を持っているなら、控除は共有者1人につき最高3,000万円。国税庁は「特別控除額は共有者全員で3,000万円ではありません」と明記しています。ただし家屋は夫だけの名義で妻は敷地だけ、という組み方だと、妻は原則として適用を受けられません。

Q. 買った値段より安く売って損が出た場合は?

譲渡所得がマイナスなので、その譲渡に対する所得税・住民税はかかりません。給与所得などと損益通算したり損失を繰り越したりする特例は別にありますが、いずれも申告が要件です。制度の説明はここまでにして、自分が使えるかどうかは税務署か税理士に確認してください。

Q. 売った翌年の税金は、いつどうやって払う?

所得税は確定申告の期限までに納付します。住民税は、申告した内容が自治体に回って、その年の6月ごろから納付が始まります。所得税を払い終わってホッとした数か月後に住民税の通知が来るので、資金は残しておいてください。

Q. 所有期間を5年超にしてから売りたい。判定はいつの時点?

売った年の1月1日時点です。2021年6月取得なら、2026年1月1日時点では4年7か月で短期。2027年1月1日を過ぎてからの売却で長期になります。税率が約39.63%から約20.315%に変わるので、この判定は大きいです。

この記事のまとめ

  • 税金がかかるのは売値ではなく、売値から取得費と譲渡費用を引いた「譲渡所得」。建物の取得費は減価償却で目減りしている
  • 自分が住んでいた家なら3,000万円の特別控除。ただし住まなくなってから3年目の年末まで、親族への売却は不可、3年に1度まで
  • 控除を使っても税金が残る典型は「取得費が分からない(概算取得費5%)」「もうけが3,000万円超」「住んでいない家」「土地だけの共有者」
  • 控除で税額がゼロになる場合も、確定申告をしなければ控除は適用されない
  • 住み替えなら、3,000万円控除と新居の住宅ローン控除は前後6年で二者択一。金額次第で有利不利が逆転する

次の一歩として、まず購入時の売買契約書を探してください。あるかないかで、この記事の計算結果が171万円変わります。見つかったら、国交省の取引価格情報でエリアの成約帯を確認する。税額のおおよその見当がついてから、査定に進むほうが落ち着いて判断できます。

(制度の要件は改正されることがあります。最新の内容は国税庁のタックスアンサーおよびお住まいの自治体のページでご確認ください。個別の税額判断は税理士へ)

出典