うちいくら?国の成約データで、うちの値段がわかる
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  3. 中古マンション売り出し価格の決め方|相場との乖離と成約期間の実データ

中古マンション売り出し価格の決め方|相場との乖離と成約期間の実データ

売り出し価格を相場より高くすると問い合わせが止まり、値下げを重ねると買主に足元を見られます。東日本レインズが公表する首都圏の成約㎡単価・在庫㎡単価の実データから、「値札」と「実際に売れる価格」の乖離がどこまで広がっているかを読み解きます。

中古マンション売り出し価格の決め方|相場との乖離と成約期間の実データ

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「いくらで売り出せばいいんでしょうか」

家を売ると決めた人が、最初に詰まるのがここです。高く出したい。でも高すぎて売れ残るのも怖い。かといって安く出したら損をする。

この記事は、その一点だけを扱います。査定を受ける前に読んでおくと、不動産会社の説明を自分で検算できるようになります。

この記事の目次
  1. 結論から言うと 🏠
  2. この記事が当てはまる人・当てはまらない人
  3. 数字で見る「値札」と「実際に売れた価格」のズレ 📊
  4. この差は、1年で5倍に広がりました
  5. 在庫が積み上がっています
  6. なぜ相場より高く出すと、問い合わせが「止まる」のか
  7. 値下げを繰り返すと、何が起きるか
  8. 手順:売り出し価格を決める6ステップ 📋
  9. ステップ1:自分の物件の「面積」と「築年数」を正確に把握する
  10. ステップ2:エリアの成約㎡単価を調べる
  11. ステップ3:自分の面積を掛けて、ざっくりの中心値を出す
  12. ステップ4:築年数で上下に振る
  13. ステップ5:不動産情報ライブラリで、同じ町の実際の取引を見る
  14. ステップ6:売り出し価格を決める
  15. うまくいかないときの分岐 🗾
  16. 値下げをするなら、こう進める
  17. 期限がある場合
  18. 一次情報:レインズと国交省が公表していること
  19. 東日本レインズ「月例速報 Market Watch」
  20. 「今が売り時かどうか」は、この記事では判断しません
  21. 国土交通省 標準媒介契約約款
  22. 2つの公的データは、性質が違います
  23. 査定額・売り出し価格・成約価格は、全部ちがう数字です 💰
  24. 両手仲介と囲い込みについて
  25. 営業電話について
  26. Q. 売り出し価格は、あとから上げられますか
  27. Q. 「相場より高く出して、指値(値引き交渉)を待つ」のはどうですか
  28. Q. 成約までにどれくらいかかりますか
  29. Q. 査定額が会社によって1,000万円違います。どう判断すればいいですか
  30. Q. 相場のデータは、どこを見れば無料で確認できますか
  31. Q. 戸建でも同じ考え方でいいですか
  32. まとめ

結論から言うと 🏠

3行でまとめます。

  1. 売り出し価格は「実際に成約している価格」の1割増しあたりが上限の目安です。それより上に出すと、問い合わせそのものが来なくなります。
  2. いま首都圏の中古マンションは、売り出し中の物件の㎡単価が、実際に売れた㎡単価より約4割高い状態です(2026年7月/東日本レインズ)。つまり、市場に並んでいる値札の多くは成約していません。
  3. 値下げは「1回で決める」。小刻みに何度も下げると、買主に「もう少し待てばまた下がる」と読まれます。

以下、この3つを実データで裏付けていきます。数字はすべて2026年9月4日時点で公表されているものです。

この記事が当てはまる人・当てはまらない人

先に、読者ご自身が当てはまるかを判定してください。

こんな状況 この記事は 理由
首都圏(1都3県)の中古マンション・中古戸建を売りたい 合う 使っているデータが首都圏の実績値
まだ査定を受けていない・受けたばかり 合う 査定額の妥当性を自分で確かめられる
すでに売り出していて反応がない 合う 「うまくいかないときの分岐」の章へ
首都圏以外にお住まい 一部合う 考え方は共通。数字はお住まいの地域のレインズ(近畿・中部・西日本)を見てください
買取(不動産会社が直接買う)を検討中 合わない 買取価格は仲介の相場とは別の値決めです
相続・離婚などで期限が決まっている 一部合う 期限がある場合の値付けは後半で触れます

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「価格を決めるのは不動産会社では?」と思うかもしれません。違います。売り出し価格を決めるのは売主本人です。不動産会社は意見を述べる立場です。この点は国土交通省の標準媒介契約約款にも明記されていて、後の章で条文を引きます。

数字で見る「値札」と「実際に売れた価格」のズレ 📊

まず、いちばん大事な数字から。

東日本レインズ(国土交通大臣指定の公益財団法人 東日本不動産流通機構)は、毎月「月例速報 Market Watch」を公表しています。ここには3つの価格が並んで載っています。

  • 成約㎡単価 … その月に実際に契約が成立した物件の、1㎡あたりの価格
  • 新規登録㎡単価 … その月に新しく売りに出された物件の、1㎡あたりの売り出し価格
  • 在庫㎡単価 … 月末時点でまだ売れずに残っている物件の、1㎡あたりの売り出し価格

2026年7月の首都圏中古マンションは、こうなっています。

首都圏 中古マンションの3つの㎡単価(2026年7月) 出典:東日本レインズ 月例速報 Market Watch サマリーレポート 2026年7月度 新しく売り出された 値札 117.86 万円/㎡ 売れ残っている 値札 118.30 万円/㎡ 実際に売れた 価格 84.17 万円/㎡ この差 約40%

売れ残っている物件の値札は、実際に売れた価格より 40.6% 高い(118.30 ÷ 84.17)。

これはどういうことか。市場に並んでいる値札を眺めて「うちも同じくらいで出そう」と考えると、成約している価格帯より4割高いところに値付けしてしまう、ということです。

ポータルサイトで近所の物件を見ると、そこに出ているのは基本的に「まだ売れていない物件」です。売れた物件は消えます。だから見えているのは在庫の値札だけ。ここが最初の落とし穴です。

この差は、1年で5倍に広がりました

同じ計算を、月例速報に載っている過去13か月分でやってみます。

うちいくらの集計方法:東日本レインズ「月例速報 Market Watch サマリーレポート 2026年7月度」2ページ目の首都圏中古マンション時系列表から、各月の在庫㎡単価と成約㎡単価を取り出し、(在庫㎡単価 ÷ 成約㎡単価 − 1)× 100 を計算したものです。元データはすべてレインズの公表値で、うちいくら側で価格の推計や補正は行っていません。

月 成約㎡単価 在庫㎡単価 乖離
2025年7月 85.47万円 92.29万円 +8.0%
2025年9月 85.18万円 94.72万円 +11.2%
2025年11月 82.22万円 100.20万円 +21.9%
2026年1月 86.99万円 105.15万円 +20.9%
2026年3月 86.34万円 110.08万円 +27.5%
2026年5月 80.78万円 114.40万円 +41.6%
2026年7月 84.17万円 118.30万円 +40.6%

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売れ残り物件の値札は、成約価格から何%離れているか 首都圏 中古マンション/うちいくら集計(元データ:東日本レインズ月例速報) 0% 20% 40% +8.0% 2025年7月 +40.6% 2026年7月 値札と成約価格の距離が、1年で5倍に開いた

1年前は8%でした。いまは40%です。

「在庫は狭くて築古の物件が多いから、㎡単価が高く出るのでは」という疑問はもっともです。実際、2026年7月の在庫は平均58.04㎡・築29.24年、成約は平均62.57㎡・築27.70年。在庫のほうが狭く、少し古い。狭い部屋は㎡単価が高く出やすいので、その影響は確かにあります。

ただし1年前の2025年7月も、在庫は57.68㎡・築29.84年、成約は62.05㎡・築26.67年でした。構成の差はほとんど変わっていないのに、乖離だけが8%から41%に開いたわけです。物件の中身の違いだけでは説明がつきません。

在庫が積み上がっています

もう一つ、同じレポートから読める数字があります。

  • 在庫件数 47,151件(前年同月比 +5.5%、5か月連続で増加)
  • 成約件数 3,638件(前年同月比 −8.6%、4か月連続で減少)
  • 新規登録件数 16,474件(前年同月比 +5.7%)

在庫を月間成約件数で割ると、47,151 ÷ 3,638 = 約13か月分。成約件数には季節のブレがあるので、直近12か月の月平均成約件数(4,061件)で割り直すと 約11.6か月分です。

新しく売りに出される件数と成約件数の比も見ておきます。16,474 ÷ 3,638 = 4.5件売り出されて1件成約。1年前の同じ月は3.9件に1件でした。

売りに出す人は増え、買う人は減っている。この状況で相場より高い値札をつけると、どうなるかは想像がつくと思います。

なぜ相場より高く出すと、問い合わせが「止まる」のか

値下げすればいいじゃないか、と思うかもしれません。でも、その前に起きることがあります。

買主は検索の絞り込みで物件を見ています。「予算6,000万円以下」「70㎡以上」といった条件です。

ここが厄介なところで、6,200万円で出した物件は、6,000万円で探している人の画面に一度も表示されません。値下げ交渉の余地があるかどうか以前に、存在を知られない。内見どころか、閲覧すらされない。

しかも予算の区切りは、多くの人が 500万円・1,000万円のキリのいい数字で設定します。だから4,980万円と5,050万円は、実質的な差は70万円でも、届く相手の数がまるで違います。

これが「高く出すと問い合わせが止まる」の中身です。じわじわ減るのではなく、境界線をまたいだ瞬間に落ちます。

値下げを繰り返すと、何が起きるか

では下げればいい、となりますが、ここに次の罠があります。

不動産会社は、レインズ上でその物件がいつ登録され、価格が何回変わったかを見ることができます。買主側の担当者は、それを見て買主にこう伝えます。「この物件、3か月前から出ていて、もう2回下がっています」

すると買主はこう考えます。「もう少し待てば、また下がるのでは」

値下げは、買主に「待つ理由」を与える行為でもあります。小刻みに何度も下げるほど、その理由は強くなります。

売り出し価格の設定で、その後がこう分かれる 売り出し価格を決める 成約価格より2割以上高く 成約価格の1割増しまで 検索条件に入らず、内見が来ない 最初の2〜3週間に内見が集まる 値下げ → 価格変更の履歴が残る 検討者が重なり、値引き交渉が弱まる 「待てばまた下がる」と読まれる 短期間で条件が固まりやすい

念のため書いておくと、これは「安く出しなさい」という話ではありません。高く出すことのコストは、時間ではなく交渉力であるという話です。売れるまでの期間が延びるだけなら待てばいい。でも実際は、待っている間に自分の交渉上の立場が弱くなっていきます。

手順:売り出し価格を決める6ステップ 📋

ここからは実際の作業です。1ステップ1動作にしています。

ステップ1:自分の物件の「面積」と「築年数」を正確に把握する

必要なのは3つだけです。

  • 専有面積(マンション)/土地面積・建物面積(戸建)
  • 築年数
  • 所在地(市区町村レベルまで)

面積は登記簿の数字とパンフレットの数字が違うことがあります。マンションの場合、登記簿は内法(うちのり)面積、販売時のパンフレットは壁芯(へきしん)面積で、壁芯のほうが数㎡大きくなります。レインズの統計は壁芯ベースが基本です。

ここで失敗しやすい:内法面積で計算して「思ったより安い」と誤解するケースがあります。手元の資料に両方あるなら、大きいほう(壁芯)を使ってください。

ステップ2:エリアの成約㎡単価を調べる

レインズの月例速報には、エリア別の成約㎡単価が載っています。2026年7月時点の首都圏中古マンションはこうです。

エリア 成約㎡単価 平均成約価格 平均専有面積 平均築年数 成約件数
東京都区部 135.77万円 7,757万円 56.18㎡ 25.76年 1,509件
東京都多摩 58.44万円 3,795万円 64.93㎡ 28.57年 354件
横浜市・川崎市 65.62万円 4,267万円 66.02㎡ 28.89年 634件
神奈川県その他 43.71万円 3,035万円 68.31㎡ 28.01年 277件
埼玉県 44.53万円 2,993万円 67.22㎡ 28.85年 449件
千葉県 41.37万円 2,947万円 71.24㎡ 30.78年 415件

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(東日本レインズ 月例速報 2026年7月度/2026年9月4日時点で公表されている最新月)

ステップ3:自分の面積を掛けて、ざっくりの中心値を出す

たとえば 70㎡ の中古マンションなら、こうなります。

エリア 70㎡での目安
東京都多摩 約4,090万円
横浜市・川崎市 約4,590万円
神奈川県その他 約3,060万円
埼玉県 約3,120万円
千葉県 約2,900万円

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ここで失敗しやすい:東京都区部だけは、この掛け算がうまくいきません。区部の成約物件の平均専有面積は56.18㎡です。70㎡を掛けると9,504万円になりますが、区部で実際に成約している物件の中心は56㎡前後の住戸で、70㎡台の住戸はもっと単価の低い外周部に多い。平均専有面積から自分の物件が大きく離れているときは、単純な掛け算は成り立ちません。

千葉県(平均71.24㎡)や埼玉県(平均67.22㎡)のように、平均が70㎡に近いエリアなら、この計算はかなり実態に近い数字になります。

ステップ4:築年数で上下に振る

上の表の平均築年数は、どのエリアも25〜31年です。ご自身の物件がこれより新しければ上、古ければ下に振れます。

ただし築年数の効き方は一律ではありません。築20年を超えたあたりから価格の下がり方はゆるやかになり、立地と管理状態の影響のほうが大きくなる傾向があります。マンションなら修繕積立金の残高と長期修繕計画、戸建なら建物状況調査(インスペクション)の結果が効いてきます。

ステップ5:不動産情報ライブラリで、同じ町の実際の取引を見る

ステップ2〜4で出したのはエリア平均です。次に、自分の町丁目レベルの実取引を確認します。

国土交通省の不動産情報ライブラリ(https://www.reinfolib.mlit.go.jp/realEstatePrices/)では、不動産取引価格情報を地図上で見られます。この価格情報は「不動産取引価格アンケート」で集められたものです。

不動産情報ライブラリは、円滑な不動産取引を促進する観点から、オープンデータ等を活用して不動産取引の際に参考となる情報を重ね合わせて表示するWebGISで、地価公示、都道府県地価調査、不動産取引価格情報、成約価格情報のほか、洪水浸水想定区域や用途地域なども同じ地図に載せられます。特別なソフトは不要で、無料です。

ステップ6:売り出し価格を決める

ステップ3〜5で出た「実際に売れている価格帯」に対して、上乗せをどうするか。判断の目安です。

上乗せ幅 想定される展開 向いている人
0〜5% 早期に問い合わせが集まりやすい 期限がある人、住み替え先が決まっている人
5〜10% 交渉の余地を残しつつ検索に乗る 標準的な選択
10〜15% 反応は鈍る。数か月の覚悟が要る 急いでいない人
15%以上 検索条件から外れる可能性が高い 売る意思が固まっていない段階

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ここで失敗しやすい:「まず高く出して、反応を見て下げればいい」という進め方です。理屈としては分かりますが、レインズのデータが示すとおり、いまの市場では在庫の値札が成約価格から4割も離れています。高く出した物件は「4割高い在庫の山」に紛れ込むだけで、比較対象にすらなりません。

そして、下げてから改めて注目される保証はありません。売り出し直後の2〜3週間は、そのエリアで探している人全員に新着として届く唯一の期間です。ここを高すぎる値札で使い切ってしまうのが、いちばんもったいない。

うまくいかないときの分岐 🗾

すでに売り出している方向けです。症状ごとに、原因と対処を対応させます。

症状 考えられる原因 対処
3週間経って問い合わせがゼロ 価格が検索条件の外/レインズ登録が済んでいない/写真が少ない ①レインズ登録証明書を確認 ②予算の区切り(4,980万・5,980万など)の直下に価格を移す
内見は来るが申込みが入らない 価格ではなく物件側の要因(採光・眺望・間取り・臭い・生活感) 内見者の感想を担当者に文字で出してもらう。値下げの前に室内の状態を改善
内見も申込みもあるが、大幅な値引き交渉ばかり 検討者が1組しかいない状態が続いている 同時期に複数の検討者が並ぶ価格帯まで一度に寄せる
3か月経っても動きがない 値付けが市場から離れている 小刻みではなく1回で相場に寄せる。会社の変更も検討
担当者から連絡が来ない 報告義務が守られていない 専任なら2週に1回以上、専属専任なら1週に1回以上の報告義務がある(後述)
他社から「もっと高く売れる」と連絡が来る 媒介契約を取るための提案の可能性 その価格の根拠を書面で求める。根拠の説明は約款上の義務

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値下げをするなら、こう進める

  • 回数は少なく、幅は意味のある大きさで。 50万円ずつ3回下げるより、150万円を1回のほうが効きます。
  • 予算の区切りをまたぐ。 5,100万円 → 5,050万円は、届く相手がほとんど増えません。5,100万円 → 4,980万円なら「5,000万円以下」の検索に入ります。
  • タイミングを決めておく。 売り出し前に「6週間動きがなければ◯◯万円まで下げる」と自分の中で決めておくと、担当者に押される形での値下げを避けられます。

期限がある場合

相続の申告期限、住み替え先の決済日、転勤の日程。期限があるなら、最初から相場に寄せるほうが結果的に手取りは大きくなります。

期限が迫ってからの値下げは、買主にも不動産会社にも読まれます。「この売主は急いでいる」と分かった時点で、交渉の主導権は完全に相手側に移ります。

なお、相続した不動産の売却には譲渡所得税や取得費加算の特例など税務の論点が絡みます。ここは制度の一般論しか書けません。実際の税額や適用可否は税理士に、登記の扱いは司法書士に確認してください。

一次情報:レインズと国交省が公表していること

ここまでの数字の出どころと、制度の裏付けを整理します。

東日本レインズ「月例速報 Market Watch」

東日本不動産流通機構は、国土交通大臣が指定した公益財団法人です。宅地建物取引業者が売却を預かった物件を登録する「指定流通機構」であり、成約情報もここに集約されます。

同機構の不動産市場動向(統計)のページでは、月例マーケットウォッチ(毎月)、季報マーケットウォッチ(四半期)、年報マーケットウォッチ(年1回)、首都圏不動産流通市場の動向などが無料で公開されています。誰でもPDFをダウンロードできます。

2026年9月4日時点で公表されている最新月は 2026年7月度 です。首都圏中古マンションの主な数字を、1年前と並べます。

項目 2025年7月 2026年7月 前年同月比
成約件数 3,979件 3,638件 −8.6%
成約㎡単価 85.47万円 84.17万円 −1.5%
成約価格 5,303万円 5,267万円 −0.7%
新規登録件数 15,590件 16,474件 +5.7%
新規登録㎡単価 97.90万円 117.86万円 +20.4%
在庫件数 44,689件 47,151件 +5.5%
在庫㎡単価 92.29万円 118.30万円 +28.2%

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レポート本文には、成約㎡単価が「3か月連続で下落」した一方、在庫㎡単価は「24か月連続で上昇」したと記されています。売り出し価格は上がり続け、成約価格は下がり始めている。この2本の線が離れていく様子が、そのまま在庫の増加として表れています。

中古戸建も同じ傾向です。2026年7月の成約価格は3,933万円(前年比 +0.6%)に対し、在庫価格は4,711万円(同 +6.9%)。差は19.8%です。1年前は12.6%でした。ただし戸建は在庫の土地面積が188.09㎡、成約の土地面積が143.96㎡と差が大きく、この乖離には物件規模の違いがかなり含まれています。マンションの㎡単価比較ほど素直には読めません。

「今が売り時かどうか」は、この記事では判断しません

過去の推移として言えるのは、成約㎡単価が2020年5月から2026年4月まで上昇を続け、2026年5月以降は前年同月比でマイナスに転じた、ということだけです。

この先どうなるかは書けません。金利、供給、税制、為替。動く要素が多すぎて、断定できる材料がありません。将来の相場を断定する記事や営業トークには、根拠が伴っているかを必ず確認してください。

国土交通省 標準媒介契約約款

売り出し価格の話をするうえで、知っておくと立場が変わる条文があります。国土交通省が告示している標準媒介契約約款(建設省告示第115号、最終改正 令和4年国土交通省告示第583号)の「2 媒介に係る業務」の一項目です。

乙は、甲に対し、目的物件を売買すべき価額又は評価額について意見を述べるときは、その根拠を明らかにして説明を行います。

甲が売主、乙が不動産会社です。つまり 「この価格で出しましょう」と言うなら、その根拠を説明する義務がある。査定額を提示されたら、「その根拠を書面でいただけますか」と聞いていい。むしろ、聞くのが前提の設計になっています。

同じ約款から、期間や報告に関する定めも押さえておきます。

項目 専任媒介契約 専属専任媒介契約
有効期間 契約締結後◯か月(宅建業法34条の2により3か月以内) 同左
レインズ登録 契約締結日の翌日から7日以内(休業日を除く) 契約締結日の翌日から5日以内(休業日を除く)
業務状況の報告 2週間に1回以上 1週間に1回以上
自分で買主を見つけた場合 直接契約できる できない

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レインズに登録したら、登録を証する書面(登録証明書)を売主に交付することも約款に定められています。売り出したのに登録証明書を受け取っていないなら、まずそこを確認してください。

有効期間が3か月以内、という点は覚えておく価値があります。契約を結んだら3か月は必ず縛られる、という意味ではありません。上限が3か月です。1か月や2か月で設定することもできますし、期間が満了すれば、自動で更新されるわけではありません。売主から更新を申し出なければ終わります。

2つの公的データは、性質が違います

レインズと不動産情報ライブラリ、どちらも公的な情報源ですが、集め方が違います。

東日本レインズ 月例速報 国交省 不動産情報ライブラリ
集め方 会員である宅建業者が登録・報告した成約情報 不動産取引価格アンケートへの回答
単位 首都圏・都県・エリア別の集計値 個別取引(地区・最寄駅・面積・価格など)
更新 毎月(翌月中旬) 四半期ごと
向いている用途 市場全体の水準と方向を知る 自分の町の実際の取引を見る

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数字が完全には一致しないのは、母集団が違うからです。レインズは業者を通した取引の登録ベース、ライブラリはアンケート回答ベース。どちらが正しいというより、両方見て挟み込むのが実務的です。

査定額・売り出し価格・成約価格は、全部ちがう数字です 💰

最後に、いちばん誤解が多いところを念押しします。

  • 査定額 … 不動産会社が「この程度で売れるのでは」と述べた意見。約款上、根拠の説明義務がある
  • 売り出し価格 … 売主が決めて市場に出す価格。査定額と同じにする必要はない
  • 成約価格 … 買主と合意して契約が成立した価格

査定額がそのまま成約価格になるわけではありません。この3つは別の数字です。

そして、一括査定などで複数社に依頼すると、査定額が数百万円から1,000万円以上ばらつくことがあります。理由の一つは、媒介契約を取るために高めの数字を出す会社があることです。高い査定額を提示して契約を取り、売れないまま数か月かけて値下げに誘導する。この流れは、業界でよく指摘されてきた形です。

だから、査定額の絶対値ではなく根拠を比べてください。

  • どの成約事例を使ったのか(住所・面積・築年数・成約時期)
  • 事例からどう補正したのか(階数、向き、リフォーム、管理状態)
  • その価格で売れなかった場合、いつ、いくらまで下げる想定か

3社に聞いて、この3点に答えられるのが1社だけなら、判断はだいぶ簡単になります。

両手仲介と囲い込みについて

もう一つ、売主が構造的に不利になりうる仕組みを書いておきます。

不動産会社は、売主と買主の両方から仲介手数料を受け取れる場合があります(両手仲介)。片方だけなら手数料は1件分、両方なら2件分です。

このため、他社から買主の紹介があっても「商談中です」と断り、自社で買主を見つけるまで待つ、という行為が起こりえます。これが囲い込みと呼ばれるものです。売主から見ると、買主候補が減り、売却期間が延び、結果として値下げに追い込まれます。

完全に見分ける方法はありませんが、確認できることはあります。

  • レインズの登録証明書を受け取り、公開されている情報を自分で確認する
  • 「他社からの問い合わせは何件ありましたか」と定期的に聞く(報告義務があります)
  • 一般媒介契約(複数社に同時に依頼できる契約)を選ぶ

一般媒介にも弱点はあります。どの会社も「自社で決まるとは限らない」と考えるため、広告に力を入れてもらいにくい。専任・専属専任のほうが動いてもらいやすいが、囲い込みのリスクは高い。ここはトレードオフで、どちらが正解とは言えません。

営業電話について

一括査定サイトを使うと、登録した直後から複数社の営業電話がかかってきます。これは仕組み上そうなります。サイト側は不動産会社から送客料を受け取っており、会社側は連絡を取るために動くからです。

「来ないようにする方法」はありません。ただ、負担を減らす方法はあります。

  • 申込フォームの備考欄に「連絡はメールのみ希望」と明記する。すべての会社が守るとは限りませんが、電話の本数は減ります
  • 依頼する会社数を絞る。6社に依頼すれば6社から連絡が来ます。まず2〜3社で十分です
  • 一括査定を使わず、自分で調べた会社に1社ずつ問い合わせる。手間はかかりますが、連絡は自分の管理下に置けます
  • 相場だけ知りたい段階なら、査定を申し込まない。レインズの月例速報と不動産情報ライブラリで、この記事に書いた計算はすべて自分でできます

「まだ会社に相談したくない」という警戒は、まっとうです。売る決心がついていない段階で査定を申し込む必要はありません。

よくある質問

Q. 売り出し価格は、あとから上げられますか

制度上は変更できます。ただし現実には、値上げは値下げよりずっと難しいです。ポータルサイトの価格変更履歴に「値上げ」と残ると、検討していた人が離れます。売り出し前に決めきるつもりで臨むほうが安全です。

Q. 「相場より高く出して、指値(値引き交渉)を待つ」のはどうですか

交渉の余地を残す考え方自体は否定しません。ただ、上乗せ幅の目安は5〜10%です。それ以上だと、そもそも検索条件に入らず、指値をしてくれる相手にすら出会えません。2026年7月時点で在庫の値札が成約価格から40.6%離れているのは、この「待ち」を選んだ物件が積み上がった結果とも読めます。

Q. 成約までにどれくらいかかりますか

東日本レインズの月例速報には「登録から成約までの平均日数」は掲載されていません。代わりに使えるのが在庫回転の考え方です。2026年7月の在庫47,151件を直近12か月の月平均成約件数4,061件で割ると 約11.6か月分。もちろん個々の物件で大きく違いますが、「数週間で売れる前提で計画を立てるのは危うい」ことは分かります。

Q. 査定額が会社によって1,000万円違います。どう判断すればいいですか

高い査定額を出した会社が高く売ってくれる、とは限りません。判断材料は根拠です。使った成約事例(住所・面積・築年数・成約時期)と、そこからの補正の中身を書面で出してもらい、3社分を並べてください。事例が具体的で、補正の理屈が説明できる会社が、値付けを真面目にやっている会社です。

Q. 相場のデータは、どこを見れば無料で確認できますか

2つあります。市場全体の水準は東日本レインズの統計ページ(毎月PDFが無料公開)、自分の町の個別取引は国土交通省の不動産情報ライブラリ(地図から検索、無料)。どちらも登録不要で、営業連絡は来ません。

Q. 戸建でも同じ考え方でいいですか

基本は同じですが、戸建は㎡単価での比較が効きにくい点に注意してください。土地の形、接道、建物の状態で価格が大きく動きます。2026年7月の首都圏中古戸建は成約1,738件に対し在庫23,197件で、在庫は約13.3か月分。マンションより在庫が厚く、値付けの影響はより大きく出ます。


媒介契約から3か月のタイムライン ※期間・登録日数・報告頻度は国土交通省 標準媒介契約約款(専任媒介の場合)による 0日 媒介契約 7日以内 レインズ登録 +証明書の交付 2〜3週 新着として届く いちばん反応が出る時期 6週前後 動きがなければ 値下げを1回で判断 3か月 有効期間の上限 更新しない選択も可 この3か月間、専任媒介なら2週間に1回以上、専属専任媒介なら1週間に1回以上、 不動産会社には業務の処理状況を報告する義務があります

まとめ

売り出し価格の決め方を、もう一度3行で。

  1. 基準は「在庫の値札」ではなく「成約価格」。2026年7月の首都圏中古マンションでは、この2つが40.6%離れています。ポータルサイトに並ぶ物件を見て決めると、成約価格から4割上に値付けしてしまいます。
  2. 上乗せは5〜10%まで。それ以上だと買主の検索条件から外れ、値引き交渉の相手にすらなれません。
  3. 値下げは回数を減らし、予算の区切りをまたぐ幅で1回。小刻みな値下げは、買主に「待つ理由」を与えます。

数字はすべて公的機関が無料で公開しているものです。査定を申し込む前に、この記事の計算をご自身の物件で一度やってみてください。会社から提示された査定額が高すぎるのか安すぎるのか、自分の目で判断できるようになります。

本文中の価格・件数・制度の記載は、すべて 2026年9月4日時点で公表されている資料に基づいています。レインズの月例速報は毎月更新されるので、実際に売り出す時期が近づいたら最新号をご確認ください。

出典